起きた。特に理由も無く、ぼんやりと意識だけが起きた。まぶたが眠気で重いのなんの、どうもまだ朝は来てないみたいだし、このまま寝直すとしようか、なんて考えて俺はとりあえず隣にいる凜也に抱きつき直す。脚も絡めたいですってスリスリさせちゃう。 「奏」  あれ?凜也、まさか起きてんの?眠れないのかな、ひと言何か声掛けて……とか思うも眠気が酷くて起きられず。ぅー、って音を出すのが精一杯。たまにあるあの切羽詰まった、追い詰められてる様子は感じないから大丈夫だと、思うけど。 「……奏」  なぁに、凜也。俺はここにいるよ。  凜也を抱き締める手に少し力を込め直す。薄手のシャツは別段触り心地が良くもなく、でも凜也の背中の暖かさは伝わってきて、もっと触っていたいなって。  ふに、と、口に柔らかいのが当てられた。ビックリして反応した腕がギシリと鳴る。ゆっくり離れていくピリっとし感覚は、部屋が静かなせいか嫌にハッキリしていて、というか、は?何?キスされた? 「っ……、んぅ、」  名前を呼ぼうとしたらまた柔らかいのが、凜也と俺の唇が重なった。あー、気持ちぃな。こっちは寝起きで力が抜けまくってるし、凜也は相変わらず無駄に上手いから。  一緒にベッドで寝転んで、抱き締め合って、凜也は頭を撫でてくれている。キスしてくれている。幸せでしか無い。 「……奏、好き。好き」 「!?……っ、っ!」 「好きだよ。……奏、好き」  付き合うようになって、それなりの月日が経っている。凜也が俺に「好き」の言葉を投げてくる事は相変わらず滅多な事じゃなくて、それでも0じゃ無いし気持ちは伝わってくるからと諦めていたのに、どういう状況だろう。やばい、すっごく嬉しい。まさかコレ、俺が気付いてないだけで実はしょっちゅうやってるとか、さっきも俺が起きる前からしてたとか、ある……? 「好き。好き」 「っは……」 「奏、」 「……凜也、俺も、好き」 「っ!?」 「もっと言って凜也、嬉しい、大好きー」 「お前なー……。……好きだよ奏」 「えへへ」  このまま狸寝入りを続けて可愛い凜也を堪能するのも捨て難いけど、いやぁ、無理。  凜也の腰へ脚を、首へお留守になってた腕を回して滅入っぱいに食い合った。起こさないよう加減してた反動か凜也も俺の扱いがかなり荒っぽくて、でもそれが余計に興奮する。  背中を這ってた手がゴソゴソと俺の寝巻きを脱がしにかかってる。そんな気もしてたけど、いつの間にか本当にそういう流れになってるし。 「肩上げろ」 「っん、だ、だめでしょ、」 「……奏、好き。ダメ?」 「う……!だ、め!涼莉さ、っんぅ!」 「平気だって」  絶対平気じゃないでしょ。前も似た感じで流されちゃったけど、俺、あの頃よりもっと声抑えられなくなってるのに。  凜也の部屋と、廊下に出てリビングと、そこから奥にある涼莉さんの部屋とで、扉は3枚。ムリムリ絶対聞かれる。…………後でタオル巻いてもらお。  しまったな、あのまま狸寝入りが正解だったか?冷静に考えたら、今回俺にバレたって理由でもうしてくれない可能性もあるんだよね。しまったな。  でも仕方ないじゃん。好きなんだよね、俺、起きた時に凜也がおはようって笑ってキスしてくれるのが。挙句にこんなにたくさん「好き」って言ってくれるなんてさ、起きるの我慢出来ないよ。だから、うん、仕方ないよね。