寒くなりましたねぇ!ここ数日、月が変わってから一気にグググッと!まだまだ耐えられる具合だけど、この先どんどんと、特に登下校の時間帯は泣けてくる程に冷え込むと思えば気分が落ち込んでくる。 登下校と言えば、寒さに合わせて景色が変わった。俺も含めて生徒たちはカーディガンやブレザーやで厚着をする様になったから、心なしか視界がカラフルだ。 「お、秋ー!奏ー!」 駅から学校へ歩いて向かっている途中、すっかり見慣れた少し色違いの茶髪が信号待ちをしていたので大声で呼びかける。 二人ともブレザーの下にパーカーを着てんのかな、背中にそれぞれ白とグレーのフードが垂れてるや。秋の方は、ウサギの耳付き。いつも不思議なんだけどアレってどこで買ってきてるんだろ? 「おはようイヨ坊!」 「よっす!はぁ追い付いたー!」 「イヨ坊〜、寒いよ無理だよ起きられないよ〜。」 「そんなんで大丈夫か秋ー?これから冬が来るんだぞー?」 とか偉そうに話す俺、さっそく今朝は寝過ごしてお母さんにドヤされていたりして。朝ご飯も食べ損ねたし。 でも黙っとこ。相変わらずキレイに整えた顔と髪とシワの無いシャツを着た奏の前で、好きな子に朝寝坊話をするのは分が悪過ぎるから。負けた気になったら恋愛は負けなんだ!恋は気から! 「そうだ!ちょっと寝癖があるくらい別になんだ!俺には俺の良さが!」 「……イヨ坊どしたの?」 「やべぇ口に出てた。あれ、秋は?」 「イヨ坊がぶつぶつ言ってる間に、先のコンビニ寄るって走って行ったよ。お店の前で合流させてね。」 「り、了解〜…………。」 ぶつぶつ、を秋にも聞かれたのかな。ニコーって笑ってくれる奏の優しさが辛い。……辛い。 寒くなってきたから温かい物が食べたくなるね、とか話しながらコンビニの前へ。お腹がグゥとなったから、俺も買い食いするのアリかも。なんて考えてたらちょうど秋が外に出て来た。 「わっ!ナイスタイミング!えへへ見て〜、いっぱい買っちゃった〜。」 「無駄遣いも程々にしなよね。」 「奏うるさいなー、放っといてよー。」 むすりと口を尖らせて反抗心を積もらせる秋。可愛い。でも小言を投げられるのが若干嬉しいのか、奏と目を合わせた途端すぐに笑顔になっている。ぐえぇ。でも可愛い。 「はいイヨ坊!」 見とれてたら急に差し出されたビニールの買い物袋。驚きつつ受け取ったそれを覗き込めばガサリと音が鳴る。中にはレモンティーのペットボトルと、恐らく肉まんと思われるモノ。 「えっ、と?」 「お腹ぐーぐー聞こえてるよ!一緒に食べよ〜。」 柔らかい笑顔を俺だけに向けながら、自分でもひとつ手に持った紙の包みを顔の横でユラユラさせている。こんな事されたら、そんな表情をされたら、俺、期待しちゃうんだけど…………。 「秋ー、俺には〜?」 「無いよ!奏には奢る価値なし!」 「ちぇ〜残念。」 そうボヤく癖に全く残念がってないのが解る。ニマニマと俺に笑ってきやがるからな。顔に出てんだよ!くそぉ! 時間だから行こうと奏に促されるがまま急ぎ歩き出し、取り出した肉まんを口に入れる。ジュワッと旨味が広がって、飲み込めば温かさでいっぱいになった。 「甘い方が良かった?」 テープをはがして現れたあんまんにパクりとかぶり付く秋。俺は、軽く首を横に振ってから、思い切ってみる。 「いや、好きだから!ありがとう秋!」